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太陽光発電の投資回収年数は、設置する地域によって数年単位で変わることがあります。三重県と新潟県では同じ5kWシステムでも年間発電量に約1,500kWhの差が生じるからです。本記事では、PVGIS(欧州委員会が提供する太陽光発電シミュレーションツール)の19年平均発電量データと国交省労務単価に基づく地域コスト差を組み合わせ、都道府県別の投資回収シミュレーションを解説します。

なお、太陽光発電で「元が取れるか」という基礎知識については太陽光発電は元が取れる?基礎知識はこちらで解説しています。本記事ではより踏み込んだ「地域別の具体的な数字」に焦点を当てます。

投資回収年数とは何か(基本の計算式)

回収年数を決める3つの要素

投資回収年数は、大きく3つの要素で決まります。

計算式の基本:

回収年数 = (初期費用 − 補助金)÷ 年間メリット額
年間メリット額 = 売電収入 + 電気代節約額

この3要素(初期費用・年間メリット額・補助金)はいずれも地域によって異なります。

要素地域差が生じる理由
初期費用都道府県別の労務単価差、積雪対応の追加費用
売電収入地域の年間発電量(日射量・緯度)の違い
電気代節約額自家消費分も地域の発電量に依存
補助金自治体補助金の有無・金額が大きく異なる

本記事のシミュレーション条件(前提)

本記事で使用するシミュレーションの前提条件は以下のとおりです。

条件項目設定値根拠・出典
設置容量5kW住宅用の一般的な規模
設置費用ベース132万円(税込)ソーラーパートナーズ2025年実績(5kW平均)
自家消費割合30%(自家消費) / 70%(売電)資源エネルギー庁 余剰売電比率70%に準拠
FIT買取価格1〜4年: 24円/kWh、5〜10年: 8.3円/kWh2026年度「初期投資支援スキーム」(資源エネルギー庁)
電力購入単価30.05円/kWh大手電力の家庭用電灯平均単価(2023年実績)

※設置費用は地域の労務単価係数と積雪加算を別途適用します(後述)。補助金は本シミュレーションには含めていません。


都道府県別の年間発電量の実態(PVGISデータ)

なぜ地域によって発電量が違うのか

太陽光パネルの発電量は、主に以下の2つの要因で地域差が生じます。

緯度・気候による日射量の違い

日本は南北に長く、沖縄(北緯26度)と北海道(北緯43〜45度)では年間日射量に大きな差があります。一般に、太平洋側の南向き斜面が多い地域(三重・愛知・静岡・高知)が日射量に恵まれています。

最適傾斜角の効果

傾斜角(パネルの角度)を南向きの最適角に設定することで発電量が上がりますが、この効果は高緯度ほど大きくなります。北海道の最適傾斜角は41度で、この角度でのパネルは水平設置より**+23.7%**も多く発電します(PVGIS計算値)。

このため、「旧実測値ランキング」と「PVGIS最適傾斜角ランキング」では順位が異なります。旧実測値では北海道が44位(1,064kWh/kW)でしたが、PVGISでは13位(1,356kWh/kW)に大幅に上昇しています。実際の屋根設置では最適角に近い傾斜を設定できるため、PVGISのほうが現実の長期平均に近い参考値と考えられます。

意外な発電量ランキング(PVGIS 19年平均)

以下は全47都道府県の年間発電量ランキングです。1kWあたりの年間発電量(kWh/kW)で比較しています。

※本データはPVGIS ERA5(2005-2023年、19年平均)、最適傾斜角・南向き・システム損失14%の条件での試算値です。実際の発電量は設置条件(屋根の向き・傾斜角・周辺の影響)によって異なります。各都道府県庁所在地の代表値であり、同一県内でも地域によって差が生じます。

順位都道府県年間発電量(kWh/kW)5kWでの年間発電量目安
1三重県1,452約7,260kWh
2愛知県1,423約7,115kWh
3静岡県1,419約7,095kWh
4高知県1,396約6,980kWh
5和歌山県1,396約6,980kWh
6長野県1,379約6,895kWh
7徳島県1,379約6,895kWh
8兵庫県1,377約6,885kWh
9岐阜県1,374約6,870kWh
10香川県1,372約6,860kWh
11岡山県1,372約6,860kWh
12愛媛県1,357約6,785kWh
13北海道1,356約6,780kWh
14大分県1,350約6,750kWh
15広島県1,347約6,735kWh
16大阪府1,346約6,730kWh
17茨城県1,345約6,725kWh
18奈良県1,344約6,720kWh
19山梨県1,344約6,720kWh
20福井県1,335約6,675kWh
21島根県1,332約6,660kWh
22宮城県1,331約6,655kWh
23宮崎県1,329約6,645kWh
24石川県1,329約6,645kWh
25千葉県1,322約6,610kWh
26富山県1,316約6,580kWh
27青森県1,315約6,575kWh
28沖縄県1,315約6,575kWh
29群馬県1,310約6,550kWh
30滋賀県1,304約6,520kWh
31京都府1,302約6,510kWh
32神奈川県1,301約6,505kWh
33栃木県1,292約6,460kWh
34山口県1,290約6,450kWh
35岩手県1,288約6,440kWh
36埼玉県1,283約6,415kWh
37東京都1,283約6,415kWh
38福島県1,281約6,405kWh
39長崎県1,280約6,400kWh
40山形県1,276約6,380kWh
41秋田県1,273約6,365kWh
42鹿児島県1,271約6,355kWh
43鳥取県1,262約6,310kWh
44福岡県1,250約6,250kWh
45新潟県1,230約6,150kWh
46熊本県1,225約6,125kWh
47佐賀県1,222約6,110kWh

※PVGIS ERA5(2005-2023年、19年平均)、最適傾斜角・南向き・システム損失14%の条件での試算値。データソース:PVGIS 5.3 API(欧州委員会共同研究センター)、2026年4月取得。実際の発電量は設置条件によって異なります。

ランキングを見て気づくことがいくつかあります。「晴れの国」として知られる岡山は11位、「雪が多い」北海道は意外にも13位に位置しています。一方、「晴れが多い」と思われがちな山梨は19位です。これは、PVGISが最適傾斜角(南向き・地域別最適角度)での発電量を計算しているためで、高緯度の北海道(最適傾斜角41度)ほど傾斜角の効果が大きくなります。

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地域で変わる設置費用(労務単価・積雪加算)

発電量と同様に、設置費用も地域によって変わります。主な要因は2つです。

都道府県別の労務単価差が設置費用に与える影響

太陽光発電の設置工事には、電工・とび工・特殊作業員・普通作業員が従事します。これらの労務費は都道府県によって異なり、設置費用に影響を与えます。

本シミュレーションでは、**国土交通省「令和8年3月適用 公共工事設計労務単価」**を使用しています。電工(40%)・とび工(30%)・特殊作業員(15%)・普通作業員(15%)の加重平均から地域係数を算出しました。

重要な注記:本データは公共工事の設計労務単価です。民間太陽光パネル設置工事の実勢価格とは異なりますが、都道府県間の相対的な労務コスト差の目安として参考値として使用しています。

主な特徴をまとめると、以下のとおりです。

  • 東京都が最も高い(係数1.155): 全国平均より15.5%高い水準です
  • 意外に安い関西圏: 京都府0.956、兵庫県0.948と全国平均を下回ります
  • 意外に高い北陸: 石川県1.098、富山県1.091と大阪府(0.996)より高い水準です
  • 東北の二極化: 宮城県1.081・福島県1.079と高い一方、秋田県0.998は平均並みです
  • 鳥取・島根の低さ: 鳥取県0.878、島根県0.890と全国最低水準に近く、設置費用を大きく下げる要因となります

なお、設置費用の詳細はこちらでも解説しています。

積雪地域の追加費用

積雪が多い地域では、架台の強化が必要になり設置費用が上乗せされます。

積雪区分対象都道府県追加費用の目安5kWシステムでの加算額
一般地域東京・大阪・愛知・三重・高知・沖縄など0円/kW0万円
準積雪地域茨城・栃木・群馬・長野・山梨・福島・宮城・鳥取・島根・石川・福井・富山+1.5万円/kW+7.5万円
多雪地域北海道・青森・岩手・秋田・山形・新潟+3.0万円/kW+15万円

※積雪加算は二次情報(タイナビ、ソーラーパートナーズの実例)をもとにした参考値です。メーカー・施工業者によって異なる場合があります。正確な追加費用は見積もりにてご確認ください。


代表4県別シミュレーション(実数比較)

シミュレーション表の見方

4つの代表県は「発電量」と「コスト」の組み合わせで選んでいます。

代表県発電量コスト特性
三重県全国1位(1,452kWh/kW)積雪なし・労務係数やや高め(1.051)
東京都中位(1,283kWh/kW)積雪なし・労務係数最高(1.155)
新潟県下位(1,230kWh/kW)多雪地域・積雪+15万円・労務係数標準(0.995)
鳥取県最下位圏(1,262kWh/kW)準積雪地域・積雪+7.5万円・労務係数最低水準(0.878)

代表4県の回収年数比較

以下のシミュレーションは、前述の前提条件(設置費用ベース132万円・FIT2026年度・電力購入単価30.05円/kWh)に各県の地域係数・積雪加算を適用した試算例です。

計算の手順:

  1. 設置費用 = 132万円 × 地域労務係数 + 積雪加算
  2. 年間発電量 = 5kW × 都道府県別発電量(kWh/kW)
  3. 売電収入 = 年間発電量 × 70% × FIT価格
  4. 電気代節約 = 年間発電量 × 30% × 30.05円/kWh
項目三重県東京都新潟県鳥取県
年間発電量(5kW)7,260kWh6,415kWh6,150kWh6,310kWh
年間売電収入(1〜4年目)約12.2万円約10.8万円約10.3万円約10.6万円
年間売電収入(5〜10年目)約4.2万円約3.7万円約3.6万円約3.7万円
年間電気代節約約6.5万円約5.8万円約5.5万円約5.7万円
年間メリット合計(1〜4年目)約18.7万円約16.6万円約15.8万円約16.3万円
年間メリット合計(5〜10年目)約10.7万円約9.5万円約9.1万円約9.4万円
設置費用目安(補助金除外)約139万円約153万円約146万円約123万円
試算回収年数の目安約10年程度約13年程度約13年程度約10年程度

※本試算はあくまで参考値です。実際の回収年数は電気使用量・生活パターン・屋根の向き・設置業者・補助金の有無によって大きく異なります。「試算回収年数の目安」は補助金を含まない試算値です。

この試算でいくつかの興味深い点が見えてきます。

三重県と鳥取県が「約10年程度」と近い水準になる理由: 三重県は発電量1位で有利ですが、鳥取県は労務単価が全国最低水準(係数0.878)のため設置費用が安く、その分回収が早まります。地域差は「発電量が高い=得」という単純な話ではなく、費用との組み合わせで決まることがわかります。

東京都の設置費用の高さ: 東京都は労務係数1.155と全国最高水準で、132万円ベースに対して153万円程度となる試算です。同じ全国平均程度の発電量でも、費用が高い分だけ回収に時間がかかる傾向があります。

新潟県の積雪影響: 新潟県は発電量が45位と低く、積雪加算15万円もあるため、回収年数は長めになる傾向があります。ただし、補助金が充実している地域では実際の回収年数が短くなることもあります。

なお、各県の試算回収年数は**「X〜Y年程度の差が生じる可能性があります」**という幅を持って見ることが重要です。本試算は標準的な条件の試算例であり、個々の住宅の条件によって異なります。

補助金を加えた場合の試算(参考)

上記のシミュレーションは補助金を含んでいません。実際には国や自治体の補助金が活用でき、回収年数を1〜3年程度短縮できる可能性があります。

  • 国の補助金(ZEH等): 数十万円規模の補助が受けられる場合があります
  • 都道府県・市区町村の補助金: 自治体によって1〜5万円/kW程度の補助があるケースがあります

補助金制度の詳細は補助金制度の詳細はこちらでご確認ください。補助金の活用で、試算より1〜3年程度早く回収できる可能性があります。

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回収年数を短くするための3つのポイント

自家消費割合を上げる(蓄電池の活用)

本シミュレーションでは自家消費30%を前提としましたが、蓄電池を組み合わせることで自家消費割合を70%程度まで高めることも可能です。

仮に自家消費割合を30%→70%に高めた場合:

  • 売電収入は減る: 売電量が70%→30%に減少(FIT収入が下がる)
  • 電気代節約が増える: 節約量が30%→70%に増加(30.05円/kWhの節約)
  • 2026年度のFIT価格水準では、自家消費拡大が有利な傾向: FIT価格(1〜4年目24円、5〜10年目8.3円)と電気料金(30.05円)の差を考えると、自家消費のほうが節約単価が高い場合があります

ただし、蓄電池の初期費用(一般的に50〜150万円程度)も加わるため、トータルコストのシミュレーションが重要です。蓄電池セット導入の詳細は蓄電池セット導入の費用・補助金はこちらをご確認ください。

設置タイミングで費用を下げる(補助金・新築同時設置)

新築住宅への同時設置では、足場が新築工事と共用できるため、既築住宅よりも費用を抑えられる場合があります。

補助金の申請方法については補助金制度の詳細はこちらもご参照ください。

相見積もりで施工費を下げる

同じメーカー・同じ容量のシステムでも、施工会社によって費用に大きな差が生じます。複数社から見積もりを取ることで、実際の設置費用を5〜20%程度抑えられるケースもあります。

見積もり比較のポイントは見積もり比較のポイントはこちらでまとめています。


よくある質問(FAQ)

Q: 発電量の「PVGIS」と「実測値ランキング」でなぜ順位が違うのですか?

A: PVGISは最適傾斜角(南向き・地域別最適角度)での19年平均値を使用しています。一方、旧実測値(ソーラークリニック集計)は各家庭の実際の設置角度に依存するため、条件が異なります。

特に高緯度の地域(北海道等)では最適傾斜角の効果が大きく、北海道の場合は最適角(41度)で水平設置より+23.7%も多く発電します。このため、PVGISでは北海道が旧実測値44位から13位に大幅に上昇しています。

実際の屋根設置では南向き・適切な傾斜を設定できる場合が多いため、PVGISの値が長期的な平均発電量の参考値として有用と考えられます。

Q: シミュレーションの回収年数はどの程度信頼できますか?

A: 本シミュレーションは一般的な条件を前提とした試算例です。実際の回収年数は、以下の要因によって大きく変わります。

  • 電気使用量・生活パターン: 在宅時間が長い家庭は自家消費率が上がる
  • 屋根の向き・傾斜: 南向き・30度前後が最も効率がよい
  • 周辺の影の影響: 近隣建物・木・煙突等による日射量の減少
  • 設置業者の施工費: 同じ容量でも施工費に差が生じる
  • 補助金の有無: 活用できる補助金で初期費用が変わる

見積もり取得時に施工会社に個別シミュレーションを依頼することをおすすめします。複数社のシミュレーションを比較することで、より現実的な試算が得られます。

Q: 発電量が低い地域でも太陽光発電を設置するメリットはありますか?

A: 回収年数は長めになる可能性がありますが、以下のメリットは地域を問わず得られます。

  • エネルギー自立: 自家消費による電気代の削減効果
  • 停電時のバックアップ: 自家消費型システムや蓄電池との組み合わせで停電時も電力確保が可能
  • 電気代上昇リスクへの備え: 将来の電気料金上昇に対するヘッジ効果
  • 環境価値: CO2排出削減への貢献

また、鳥取県の事例でも見たように、労務単価が低い地域では設置費用が安く、発電量が低くても回収年数が思ったより長くならないケースもあります。地域の設置費用と組み合わせた総合的な判断が大切です。

Q: FIT制度の買取価格が下がると回収年数は変わりますか?

A: FIT価格は売電収入に直接影響します。2026年度は「初期投資支援スキーム」が導入され、1〜4年目は24円/kWhと手厚い支援になっています(2024年度の16円/kWhと比較して大幅に上昇)。5〜10年目は8.3円/kWhに下がりますが、売電収入だけでなく自家消費による電気代節約も回収の柱となるため、売電一辺倒より自家消費を重視した設計が重要です。

FIT期間終了後の選択肢についてはFIT終了後の選択肢はこちらで詳しく解説しています。


まとめ

本記事では、PVGIS 19年平均データと国交省公共工事設計労務単価をもとに、都道府県別の投資回収シミュレーションを試算しました。

主なポイント:

  • 発電量1位は三重県(1,452kWh/kW)、最下位は佐賀県(1,222kWh/kW)で、約1.2倍の差がある
  • 北海道は発電量13位(旧実測値では44位)。最適傾斜角での効果が大きいため、意外に高い水準
  • 設置費用は発電量だけで決まらない: 鳥取県は発電量43位でも、労務単価が低く(係数0.878)積雪加算(準積雪+7.5万円)後の総費用が安い。発電量1位・三重県と回収年数は同程度の試算になる
  • 東京都は費用が高め: 労務係数1.155で全国最高水準。同じ発電量水準でも費用が嵩む

代表4県の試算回収年数の目安(補助金除外):

試算回収年数の目安
三重県約10年程度
東京都約13年程度
新潟県約13年程度
鳥取県約10年程度

正確な回収年数は設置条件と業者によって異なるため、複数社から無料見積もりを取ることをおすすめします。

免責事項: 本記事のシミュレーションは一般的な条件を前提とした参考試算であり、特定の投資判断を推奨するものではありません。実際の投資回収は設置条件・補助金・電力使用状況等によって大きく異なります。太陽光発電の導入にあたっては、施工業者による個別シミュレーションを必ずご確認のうえ、ご自身の判断と責任で行ってください。

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